【「反バッシングムーブメント」第一弾アクション】世田谷区生活保護行政「人権侵害」事案について、区長に申し入れ・記者会見を行いました!

 本日1月20日、「反バッシングムーブメント」の第一弾アクションとして、世田谷区の生活保護窓口で起きた「人権侵害」事案に関する記者会見と、区長への改善の申し入れをおこないました。
 今回の事案のポイントは以下の通りです(事案の詳細はこちら)。

・昨年9月、東北地方の20代女性が親兄弟からの虐待から逃れるために単身上京し、警察署で住民票の閲覧禁止措置を取った
・その後、女性が昨年10月に世田谷区烏山福祉事務所で生活保護を申請しようとした際、上記の状況にも関わらず、「親に連絡を取れ」「福祉事務所から親に連絡をする」「実家に帰れ」などの対応がなされた
・女性は深刻な精神的苦痛を受け、また生活保護の申請をすることもできなかった
   
 このような生活保護行政の対応には、①生活保護の申請権侵害(=違法行為)、②虐待・DVケースへの不適切な対応の2つの問題点があります。

 


①生活保護の申請権侵害(=違法行為)
 
 生活保護法第7条に基づき、生活保護の申請は誰でも可能です。しかし現実には、福祉事務所が当事者に生活保護の申請をさせず追い返す、という対応をおこなっていることが少なくありません。これはいわゆる「水際作戦」と呼ばれる違法行為です。今回のケースも、家族との連絡を強いることで申請を思いとどまらせようとし、「実家に帰れ」と言って追い返そうとしていることから、「水際作戦」であると言えるでしょう。

 日本の生活保護(公的扶助)を取り巻く状況は、国際的に見ても問題が多いという指摘もなされています。日本では「不正受給」がクローズアップされますが、実際には「漏給」の方が重大な問題です。生活保護法上の不正受給の割合(2013年度)は、件数ベースで2.73%、金額ベースで0.51%となっています。それに対し、生活保護の捕捉率は日本で約2割、ヨーロッパでは8~9割とされており、日本では膨大な「漏給」が起きています。さらに、日本における生活保護の申請権侵害の問題については、国連社会権規約委員会から「申請手続の簡素化」「スティグマの払拭」について勧告も出されています。


②虐待・DVケースへの不適切な対応――行政による二次的被害

 当事者は家族からの虐待から逃れるために上京しており、居所を知られないために警察署で住民票の閲覧禁止措置を取っていました。また、当事者は収入や預貯金はなく、生活保護が受給可能な状況で福祉事務所の窓口を訪れました。

 しかし、窓口では生活保護担当の職員とDV担当職員が対応に当たりましたが、本人が家族と連絡を取るように求めました。
DV担当:『一回お父さんたちと、お父さん戻ってきているし、Aさんだってもう27歳だし、子供じゃないから一回お話しするということはできないのかしら?

また、それにとどまらず、職員の方から連絡を取ろうともしています
DV担当:『取れない。ウチからも取っても難しい? 取ることは難しい?

また、さらに虐待を受けていた実家へ帰るようにも要求しました。
生活保護担当:『…だけどそれを全部じゃあダメだ、じゃあ今がいいのかってことになっちゃう。このままでいられるのならいいけど。だけど今、このままでいられないんだから、それだったら何かを選ぶしか無いわけ。ね、それだったら実家に帰るのか、シェルターに入るのか、じゃあ施設に入るのか?それか頑張って働いて、もう少し(居候先の)Bさんのところに住まわせてもらえるのか、とか。』
生活保護担当:『…自分で決められないんだったら、お金を渡してでも親元にいるしかなかったりとか。そういうことになっちゃうんだから。だから、それくらい強い気持ちがあって出てきたんだったら、少しの間、シェルターだって我慢しなきゃいけないところ、ずっと一生いろと言っているわけじゃないんだから。』

 このような言葉を直接的に受けたことにより、当事者は深刻な精神的苦痛を受けることとなりました

 このように無条件で可能な生活保護の申請権を侵害しているという問題にとどまらず、今回のような対応は一般的な虐待・DVケースへの対応としても不適切であり、本人に対し深刻な精神的苦痛を与える二次的被害を拡大させていると言えます

 例えば、内閣府男女共同参画局作成の「配偶者からの暴力の被害者対応の手引」では、「被害者が望んでいないのに、『加害者のところに戻る』ことや、『加害者と話し合う』ことを勧めないでください。危険です。」と指摘されています。

 一般的なDV被害に対してはこのようなガイドラインが示されているにもかかわらず、今回の事案ではそれに反する対応がおこなわれたわけです。しかも、このガイドラインに背いたのはDV被害への対応を専門とする担当職員でした。

 生活保護対象者に対しては経済的にも著しく不安定であることから、一般的なDV被害者以上に慎重な対応が求められています。しかし、実際には一般的被害の水準ですら救済がおこなわれず、むしろ被害を拡大させるような対応がおこなわれました

 さらに、生活保護法制度上においても、「要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない者並びに夫の暴力から逃れてきた母子等当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者」に対しては、扶養照会をすることが適切でないとされています。

 扶養照会とは生活保護を申請した者の親族に対して、扶養する意思があるかどうか確認する手続きを指します。しかし上記法律に定められているように、扶養紹介は必ずしもしなければならないものではなく、今回のような事案では当事者の身を危険に晒す恐れがあり、すべきではありません。また実際に扶養をするかどうか、扶養を受けるかどうかについても本人の意思に任せられています。

 このように生活保護窓口において不適切な対応がおこなわれたことにより、当事者は深刻な二次被害を受けることになりました。


区長への改善申し入れ、記者会見による社会化

 以上の問題について、1月20日に保坂展人世田谷区長に生活保護行政の改善を求める申し入れをおこないました(申し入れ書は下記よりダウンロードできます)。具体的には、①生活保護行政の改善に向け、区と私たち支援団体との継続的な協議の場を設けてほしい②「誰でも安心して利用できる福祉の窓口」を作るという趣旨で、世田谷区としての「宣言」を出してほしい、というものです。

 これに対し、保坂世田谷区長は、すでに実態調査を進めており、私たちの要望について真摯に受け止めていただきました。申し入れの内容に対する区の回答をしていただくことになったので、回答があり次第公開していきます。

 さらに、同日厚生労働省で記者会見も行いました。10社以上が集まり、生活保護行政の問題に対する関心の高さを窺わせました。

 今後は1月24日に生活保護問題対策全国会議幹事の稲葉剛さん、NPOほっとプラス代表理事の藤田孝典さんらと共に、先日の小田原ジャンパー事件について、小田原市に申し入れと意見交換を予定しています。また同日記者会見も開く予定ですのでご注目ください。

 「反バッシングムーブメント」では、今後も生活保護行政で起きている人権侵害を告発し、是正させていくアクションを実施していき、ブログ上で随時報告していきます。活動に参加したいという方は、こちらまでご連絡ください。

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